勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
紅葉さんの態度に苛立ちを感じながらも彼の言葉をもう一度頭の中で繰り返す。
宴って言った?
変に畏まった紅葉さんの言葉を嫌味以外のなにものでもないと決めつけていた私は驚きのあまり言葉を失い、一人その言葉を頭で復唱する。
確か…―、重家様御披露目の宴って言ってたよね?
重家の御披露目?
「宴っ?」
やっと紅葉さんの言葉を理解できた私は、三成と紅葉さんに視線を向けて声を張り上げた。
くすくすと笑う三成。
紅葉さんはうんざりとした表情を浮かべて、
「遅いぞ、阿呆紫衣。」
呆れたように言葉を落として、ついでにため息も吐き出した。
「てっきり紅葉さんの嫌味だと思って聞き流そうとしてたから…。」
悪気なんて全くない正直な気持ちをそのまま言葉にすると、
「紫衣は俺に喧嘩を売ってるのか?」
紅葉さんはニヤリと笑って私に話しかけた。
「!!」
滅相もございませんとひれ伏したくなるような紅葉さんの言葉と黒いオーラにちょっぴり恐怖を感じたけれど、なんとかこらえた。
だって、紅葉さんにやられっぱなしは嫌なんだもん。
悔しいんだもん。
「別に喧嘩なんて売ってないよ?」
「俺の言葉が嫌味だって?」
「だって、それは普段から紅葉さんが嫌味をたくさん言うから…つい…。」
「つい?」
「そう、つい…ね?」
「ね?じゃないだろ!」
「じゃぁ…、えっと…
……ごめんなさい。」
悔しいのに、紅葉さんには勝てなくて結局最後には私が涙目になって謝るしかない。
なんか腑に落ちない。
「泣くなよ阿呆紫衣。」
なのに困ったような紅葉さんの表情に更に悲しくなる。
「だって紅葉さんが意地悪するからでしょう?!」
「俺が意地悪なのか?」
「意地悪じゃない!」
ピシャリと言い放つと紅葉さんは益々困惑した表情を浮かべて眉を下げて黙り込んでしまった。