ほっぺた以上くちびる未満
 
身体を小さく震わせながらボクを睨むその姿は、まるで必死に威嚇してる子猫みたいや。


本当は甘えたいのに、素直になれへんねやね。


こないな可愛い子猫は、撫でて撫でて撫で回して、息が出来なくなるくらい強く抱き締めて、ぎょーさん可愛がってあげたなる。


スッと腰を落として、自分の目線を彼女の目線に合わせる。


視線を絡み合わせれば、恥ずかしそうに目を伏せる。


物言いたげに薄く開いているその唇に誘われるように、ゆっくり顔を近付けた。


「いや」


掠れた拒絶の声。


ほっぺに伝わる熱。


ゆっくり目を開ければ、ボクのほっぺに手を伸ばす彼女と目が合った。


せっかく近付けた顔を押し離されれば、黒い感情が胸の奥に広がる。


 
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