ほっぺた以上くちびる未満
「この辺のハズなんだけどなあ……」
学校帰り、閑静な住宅街を1人でウロウロ。
「ていうか、住所だけ言われて分かるわけないじゃん!
地図くらい送りなさいよね、あのイケメン奇人!」
最後に付けた悪口が大して悪口になってないことには気付かず、私は同じ道を行ったり来たりしていた。
「それにしても……」
この辺にあるのは、大きな豪邸や綺麗な高層マンションなど、高級住宅ばかりだ。
……ほんとにこの辺で合ってるのかな。
そう疑心を抱きながら角を曲がった時、見慣れた長身とばったり遭遇した……のは良かったんだけど。
「あらま、ええタイミングで会うたね」
「スズ君、この子誰?」
……こっちのセリフなんですけど。
なぜか、彼の隣りには女の人が立っていた。
丁寧に巻かれた金髪、露出の多いワンピース、スラッとした長い脚……私とはまるで世界が違う、それはそれは綺麗な女性。
正直、彼とお似合いすぎて思わず唾を飲み込んだ。