ほっぺた以上くちびる未満
「なんでそない下がってんの?
隣りおいで」
3歩後ろを歩いていた私の腕を、彼の大きな手が優しく引っ張る。
「歩くん速かった?」
そう言いながら手を握る仕草はあまりに自然で、慣れてるんだと言われなくても分かった。
繋がれた手を振り解く。
「……どないした?」
その左手、さっきの女の人とも繋いでた。
そんな手で私に触らないで。
「……ほんま可愛いわ」
呟かれた言葉は小さすぎて、私には聞き取れなかった。