好きじゃない。ワケでもない。
断るワケないよな、みたいな顔をした小泉拓。
まつげ、長いなおい。
でも悪いけどあたしはあんたのオモチャになる気はありませんの。
後ろでニヤニヤしてる男子集団にざわめく教室が既にあたしのなかの普通、という絶対領域を侵してるんだよ。
「い、や。」
満面の笑み、なんてオプションを付けてやるはずもなく。
顔も見ずにカバンを手に教室を出た。
たしか今日はスーパーでキャベツが安かったはず。
最近の野菜高騰の打撃は厳しい。すると自然と足も早くなる。
けして、後ろから迫る不穏な気配を撒くためでは、ない。
「ちょっと待ってよ」
「ちっ」
コンパスが違いすぎるのを考慮して欲しい。
「なにか?」
「なんでダメなの?」
面倒だけど振り向き顔を上げる。視界に映ったキレーなお顔にはお前ごときが俺をフルなど納得できないと書いてある。
「あら、いいって言ってよかったの?」
「そ、それはもちろん」
若干焦ったような小泉拓。
「ふぅん、でもあたし。貴方の事何も知らないから」
「これから知ればいいじゃん」
…案外しつけぇな。