雪情
【車酔いー7】


その頃
内藤はというと、

村の一歩手前まで
車を近付けていた。






村まで行く山道を
自動車で走り、

雪もあるので
スリップしないように
慎重に走っている。






そして、
運転をしている
内藤の隣には

先輩の山本が
かなり険しい顔を
しながら乗っている。






先輩と言っても
内藤より2、3歳
年上なだけで、

二人とも
まだまだ若造であった。






山本は今
田崎の身を心配していて
表情が険しいわけでは
ないのだ。







確かに
心配はしていない
わけではないが、

今はそれどころでは
ないようである。







実は彼
極度の乗り物酔いで、

この山道は
かなりハードであった。






しかも
雪で道はガリガリに凍り

いつもより
車は揺らいでいた。






一見山本は
背も高くて
ガタイもしっかり
しているのに、
車酔いに弱いところが
難点である。

が、署内の
婦警達からすれば、
そんなギャップが
人気を呼んでいる。






しかし、
本当に辛そうな
表情である。






内藤は心配そうに聞いた






「先輩大丈夫ですか?

やはり
運転された方が
酔わないと思いますが」






「いや、大丈夫だ。

停まるのも
面倒だろうから
このまま運転してくれ」






「あ、はい。

限界きたら
どこかで休みましょう」






と内藤に言われても、
もうすでに
山本は限界だった。






しかし、
先輩としての
面子というものもあり、

休むなどとは
口が裂けても
言えなかった。






「じゃあ………

帰りは………

俺が運転しよう………」







もう
喋るのもやっとである。






長く口を開くことが
できないのであった
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