雪情
【雪山ー11】


確かに数年前
そんなような事件を
小耳に挟んだことがある








「そんな
凶暴な男がいるのに
警察に捕まらなかった
のか?」







「警察の大掛かりな
捜査にも関わらず
犯人は捕まらなく、
手がかりさえもない。

そこでついた名前が
雪男なんだ。

だから何年か前から
吹雪の日に
この山に登ることは禁止
されているんだ!」







田崎は少し考えた。
裏の裏をかいて
嘘をつくだろうか?






そうだとしたら
この男、
かなりキレものだ。






しかし、
この白井の
真剣な顔を見ると
話は本当らしい。





田崎は





「駅員さんも
言っていたし、
信じるしかないな。

だが引き返すのは
かえって危険だ」







「なぜだ?」







「いくら大男でも
食料は必要だから
山を下らなければ
ならない。

とすると毎回下るのは
辛いから、
山の麓から中盤までに
潜んでいそうな
確率は高い」







「それで?」






「今はもう頂上付近まで
来ているんだろ?


来た道を戻るより、
越えてしまったほうが
無難だ。

そうは思わんかね?」





と田崎が言うと
白井は失笑した。







「くく……
ヤツを甘くみると
命を落とすぜ。

この山で吹雪があれば、
どこにでも
現れるらしいからな」





さらに白井は






「だがいい判断だ。

俺の言うことも
丸っきり信用しない
わけでもないな」







田崎は渋い顔で







「本当はこんなことは
信用したくないが、
いざという時は
拳銃があるから大丈夫だ」







田崎はポケット越しに
拳銃をパンパンと叩いた
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