雪情
【カモシカー2】


「登山みたいだな~オイ

学生時代を思い出すよ。

昔ヒゲミって言う
面白い先生がいてさ…」



「おい白井よ。

お前は
黙って歩けんのか?」



呆れた感じで、
田崎は言った。



「いいじゃねーか。
アンタみたいに緊張
したら、
いざって時に
対応出来ないぜ?

たまにはこんな景色も
悪くないもんだ。

あ、でも
俺らが雪男捜索に
行くこと、

言わなくて
本当に良かったのか?」



「川上さんのことかね?」



「他に誰がいる」



「そんなこと
彼女に言ったら、
今度は何するか分からん

ここは黙って
コッソリ出て来るのが
正解だと思うがね」



「まあ、
そりゃあそうだな。

ほっとくのが一番ってか」



とクルクル小枝を
回している。



でも本当に
そんな姿を見ていると
面白いものだ。



出会った頃は
ムスーっと無愛想な
顔をして

何も喋らなかった。


だが
そんな男が今、
小枝を振り回し
遊んでいるのだ。



そのギャップが
少し可笑しくて
注意も忘れていたのだ。



思えば
こんなによく喋る
男だとはな……



人は見た目ではないと、
昔言ってた
先輩からのアドバイスが

ようやく分かってきた。



そう考えていると、

また白井が
話しかけてきた。



「山頂付近まで
行くんだろう?

あんたよく道分かるな」



田崎が
先頭を歩いているので

皆それに
付いて行っているのだ。



「これだけ明るきゃ
山頂くらい分かるよ。

まったく
バカにしおって……」



ブツブツと田崎は言った



一面の雪だらけの
世界は終り、

目の前には
木々が道を囲んでいる。



道は
雪が積もっていても
明るいるので、

木がない所を辿れば
分かるものである。



一応列となって
歩いているので、

田崎が
頂上目指して
歩かなければ
ならないのだ
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