雪情
【予感の的中ー11】


「さっきは
死体に何してたんだよ?」




「首の折れ方を
見ていたんだよ。

カモシカと荻原さんのを
比較するためにな」




「んなもん見て
何が分かったんだ?」




「やはりカモシカを
襲ったのも、

荻原さんを殺したのも
同一の犯人と
言ってもいい。

まったく同じ方向に
首が曲がっていたよ」




二つの死体が
綺麗に同じ方向に
曲がっていたのを

田崎は思い出していた。




「でも
雪男は何のために
カモシカを殺したんだ?

まさか俺らを
挑発するため?」




そう白井は言うが、
田崎は首を振る。




「それは分からない。

挑発するにしても
ワシ達が
あの林道を通ると
知っているはずもないし

かといって
何のために動物まで
殺したか
理由までは分からない」




「ただの
殺人狂じゃないのか?」




「さてね……
…見当つかん」




と小川が台所から
ビールを片手に
やってきた。




「それより、
さゆりは無事だったん
だろう?

まあそれはそれでいいが

様子はどうだった?」




「相変わらず
戻る気はなさそうだが、
一人きりは
やはり寂しいらしい。

また小屋に来る分には
いいようなことを
言っていたがね」




そう言うと
小川は少し
安堵の表情になる。




「そ、そうか?

それは良かった」




「確かにそうですね」




と大久保も
台所からやってきながら
言った。




「女性一人で
殺人狂の大男を待ち、

外には荻さんが
死体となって
倒れている………

誰だって
寂しくもなりますよ」




いくら気が強くても
女性は女性である。


寂しくならない方が
変であった。




「まあ男の俺でも
そんなのこええよ」




白井はそう言うと
腕を頭に組み、

ゴロンと
横に寝っ転がった
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