雪情
第12章 第2の悲劇
【存在せぬものー1】


ゴウ!!!




「これ
さっきより
酷いんじゃねーか?」




白井が
窓を眺めながら言った。




「ヘタしたら
小屋に行く途中
雪男に出くわすかもな、

少し雪が止んでから
行ったらどうだ?」




「分かっているよ。
ワシだってバカではない

1人で川上さんのとこへ
行く案も、

雪はそんな降ってなくて
視界が良い場合に
限った条件だよ」




「そうか…
じゃあまた
暖かいもん作ってやるよ」




と白井は少し
機嫌がいいようだ。




それもそのはず、
自分は川上のとこに
行かなくともいいし、

もう
捜索に出ることもない。




ただここで待ち、
のんびりしていれば
いいのだ。




「気楽なもんだな……」




そう田崎が見つめる先に

白井はご機嫌そうに
料理をしている。




鼻歌でも
歌いだしそうな
手さばきで、

テキパキと
作業をこなしている。




「おい、
さっきワシら
食べたばかりなんだから

そんなに
たくさん作らないでも
いいぞ!」




田崎が言うと
台所から返事が返ってきた。




「何言ってんだよ。

こんなとこだから
食うもん食っとかなきゃ
何かあった時に困るだろ

山のプロに聞いてみな。
なあ、
大久保さんも
そう思わないか?」




突然
大久保は話をふられたが
冷静に返した。




「まあ、そうですね。

非常時に備え、
常に食べておくのも
いいかもしれません」




田崎も
できることなら
そうしたいが、

たくさん
食べたいとは言えなかった。




それは
あくまで食料を
分けてもらっている
身なので、

遠慮をしていたのである




(まったく白井のヤツは
自分の家のように
台所をあさりおって。

羨ましいくらい
神経の図太いヤツだな…)




と内心田崎はそう思った
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