雪情
【存在せぬものー10】


「川上さんが
こんな話をするのは
珍しいですな。

でもなぜそんな話を?」



「……本当はこの話
荻さんから聞いた話よ。

あなたは警察に任せるのが
一番だと思うかも
しれないけど、

私はここで待ち
雪男捕まえることが
一番だと思うわ」



「…しかし」



「さっきの話を聞いて

どっちが荻さんの
為になると思う?」



田崎は迷った。



警察に任せるのが
荻原のためになると
言うのは、

あくまで田崎の考えで
あった。



川上の立場から視点を
置けば、

どうしても今
この山を
下山するわけには
いかないのは分かる。



「ほら、
答えられないでしょう?」



「……確かに
自分の立場から
考え過ぎていたところは
あったかもしれんが、

ワシも簡単には
考えを変えられませんぞ」



「分かったわ。

でも、
もう少し待ってほしいわ」



このままでは

またズルズルと
いってしまいそうである



「これ以上は危険過ぎる

もういい加減
戻っていただけませんか?」



「……話をしたら
喉渇いちゃった。

また飲み物持って来たら
話を聞くわ」



と川上は
話をはぐらかした。



「川上さん!お願いです」



しかし、
それ以上川上は
答えなかった。



やれやれ、
といった感じで
田崎は立ち上がった。



「暖かいお茶とかで
いいですかな?」



「ええ、それでいいわ」



それを聞くと
田崎は戸を開け、
外に出た。



相変わらず外は
吹雪いている。



まったく空は
こんな天候ばかりで
飽きないのだろうか?



そう考えながらも、
田崎は歩き始めた。



白井は
家で大人しくして
いるだろうか?



小川と
ケンカしていない
だろうか?



そんな心配をしながら
田崎は家に着き、

中に入っていった
< 156 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop