雪情
【二人目の死者ー7】


「ダイビングメッセージ
ってのは
なかったのか?」





白井が
ビールを飲みながら
聞いてきた。






「ダイビングじゃなくて
ダイイングメッセージ
だろ。

飛び込んでどうする。

ダイイングメッセージは
雪男の名前も
分からないんじゃ
無理だよ」






「じゃあ「雪男」って
書けば、
いいんじゃないか?」





「それが
見事に心臓を貫いて
いてな、
即死だったよ。

…それに現実には
ダイイングメッセージ
なんてのは
滅多にないことだ」





先程田崎は
川上の撃たれたところに
注目してみたが、

弾は正確に
心臓部分に見事一発だけ
撃ち込まれていた。





「伝説と同じだな……」






白井はそう言い
またビールを飲んだ。






「伝説?雪男のかね?」






「ああ、村の伝説だ。

雪男は自主的に
絶対に武器を
持たないんだ。

だからその場限りの
武器を奪うとみた」





「川上さんの
銃とかだね」






「ああ、
たまたま相手が
手にしている武器。

例えばナイフにしろ
包丁にしろ

相手が
持っているものを奪い
それで殺害する。

それが今回
銃だったわけだ」





なるほど、
相手の武器を奪うか…






田崎の中にあった疑問が
一つ消えた。






だが、
なぜ雪男は
銃を奪って
逃げないのか?






それは
荻原の時も
川上の時も同じである。






二人とも
でかい銃を持ち、

しかも
今回に至っては
その銃を奪ったにも
関わらず、

それを持って
逃げなかったことだ。






なぜ
雪男は自主的に
武器を持たないのか?






「どうしてヤツは
武器を持たないのか…

…理由が分からん」





新たな疑問に
頭を抱える田崎であった
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