雪情
【唐辛子団子ー11】


作り終わると
田崎はそれをヒョイと
持ち、

ジーっと見つめた。





「しかし、
これが砕けて
中の目潰しが
うまく出るのかね?」





と少し不安そうに
田崎が白井を見つめる。






「仕方ねえだろ?

こんな山奥じゃ
この位しか代用品が
ないからよ」






うまくいくかは
分からないが、

贅沢は言っていられない






「でも
こんなことしなくとも、
いい方法があるぜ」





「何かね?」






「決まっているだろ、
とっとと
下山することだよ」





そう聞くと
田崎は分かったかの
ように、

小さく手を挙げた。





「それは分かっておるよ

もう
ここからは一般人の
世界ではないからね」






既に
犠牲者が
二人も出ているのだ。






悠長なことは
してられない。






吹雪が止み次第、

ここを出て
警察に知らせなくては
ならないのだ。







無論
先程までは
川上が強情一点張りで
小屋を出なかったから、

山を下山するわけには
いかなかったが、

それは
川上が女性なので、

一人置いて行くことが
できなかったという
ことである。







それが
自分達で
守りきれると言う
甘い考えで、

第二の殺人が
起きてしまったので
あった。







だが、
もうこれ以上は
雪男の好きにはさせない






小川には悪いが
彼の帰りを待つより、

この三人だけで
街まで戻ることが
先決である。






そうでもしないと、
また同じことの
繰り返しであるからだ。







幸い、
川上の仇を取りに
出て行った
小川は男性なので、

女性よりかは
気兼ねなく一人雪山に
残して、

下山することが
できそうである
< 183 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop