雪情
【強盗殺人ー8】


「だから
それは知りません!!

お金目当てで
殺人はしていませんよ!」





「嘘をつくな!!

だいたい、
そのお前の言う
殺人理由も胡散臭いな」





白井のこめかみが
少しピクリと動いた。





そんなことを気にせず
男は続けて、



「なら
もう一度言ってみろ!

藤川さんを
殺害した理由を」





「一体何度聞いているの
ですか?
これで三回目ですよ。

もう…
言いたくありません」





と白井はうつむき、
元気なさげに答えた。





そう…
殺害した理由は
白井にはあった。





彼の言う通り、
金目当ての殺人では
ないのである。





しかし、
この男は白井の話を
全く信じてくれず、

その「理由」も
何度も話すのは
心苦しいので、

これ以上は
言わないことにした。





そこを男は突いてきた。





「言えないってことは
嘘を忘れたんじゃ
ないのか?

どうだ、図星だろ?」





「………」





黙りこくる白井に、
更に
追い討ちをかける様に
言った。





「いい加減
容疑を認めたらどうだ?

楽になりたいだろ?」





「…本当です。
私の言ったことは
全て事実です」





「はああ…」





これ以上問い詰めても
白井が口を割らないと
思った男は、

ゆっくり近付いて
白井の耳元で囁いた。





「いいか…

お前の言ったことが
本当なら、
まだ刑は軽くなる。

だが、
金目当ての殺人なら
刑は重い。

強盗殺人は
重罪なんだよ」





そう言われても
白井は負けなかった。





怒鳴られても、
嫌味を言われても、
ここで相手を
殴りでもしたら、

全てが水の泡である。





本当に
強盗殺人をしていない
ことを、

伝えたかったのだ
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