雪情
【強盗殺人ー12】


白井は
ずっと窓から
外を眺めていた。




さすがに
それ以上の過去は
思い出したくなかった。




「ホントに
俺が逃げないって
信じやがって…

あの刑事……」




今までは何をしても、
どんなに一生懸命
訴えても、

刑事という生き物は
信じてはくれなかった。




しかし、
あの刑事は違う。




俺の事を
信じてくれている。




ギイ~……




後ろで
ドアが開く音がした。




しかし、
白井はその音に
気付かなかった。




白井はさらに考え続けた




まだあの刑事とは、
さっき会ったばかりの
他人だというのに、

素直に信じてくれた。




ただ逃げるチャンスを
わざと
棒に振ったという
理由だけで、

俺のことを
信じてくれた。




本当に、
このまま俺が逃げたら
どうなるだろう?




あの刑事は
どんな責任を
負わされるだろう?




感情だけで殺人犯を信じ

逃亡されれば
上司に叩かれる上に、

犯罪者だと隠してきた
大久保や小川にも
訴えられるかもしれない




それだけではない。


今雪男として犯罪が起き

もう二人も
人が殺されているのだ。




当然
ここで白井が逃げたら
疑われ、

ますます田崎に
重い罰が下るであろう。




それを分かっている
はずなのに、

あの刑事は
俺を信じている。




バカバカしい、
いっそ逃げてやろうか?




いや、
そんなことは
絶対にできるわけがない




今逃げたら、
今度はあの刑事が
犯罪者を信用できなく
なる。




それは
自分がされたことと
同じ意味となるので、

白井は
田崎を裏切ることは
ないのであった。




ギ………ギ…




後ろから忍び寄る影に

白井は
まだ気付かない
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