雪情
【強盗殺人ー13】


しかし、
白井には田崎の事が
分からなかった。




どうしてここまで
信じてくれるの
だろうか?




さっさと手錠をかけて
山を下山すれば
いいのに、

それをしようとはしない




「ホント…
バカな刑事だよ」




「誰が
バカな刑事だって?」




白井は驚き、
後ろを向いた。




そこには
田崎が腕を組んで
立っていた。




「いつからそこに?」




「今来たばかりだよ。

それより
バカな刑事って
誰の事だね?」




白井はクスっと笑い、
窓淵から降りた。




「あんた以外の誰がいる」




「まったく
ワシがいないとこでも
バカにしおって」




とため息をつくように
田崎は答えた。




「んで、どうした?
あの男、
目が覚めたか?」






田崎は首を振りながら


「いや、
回復はしている
みたいだが、
まだ目は覚めんよ。

それより
こんな暗いところに
一人でいないで、
そろそろ下に来い。

大久保さんも
心配していたぞ」




大久保『も』という事は、

田崎も
心配していたという
意味と捉えられよう。




実は
白井が元気ない感じが
したので、

田崎が一番心配して
いたのだ。




「ほれ、下に行くぞ。

何か悩みがあるなら
ワシが聞いてあげよう」




田崎が部屋を
出ようとする。




犯罪者に悩み相談?


フ…笑わせてくれる。


こんな事を言うのは
あんた以外にいないよ。



田崎は
白井を軽蔑視せず、

普通に人間扱い
してくれる。



まるで
犯罪者だという事を
忘れているかのように、

普通の友人のように
同じ視線で話してくれる



「待てよ、刑事さん。

今行くよ!」



白井はその後を
追いかけた。





その時
田崎のその背中は
とても大きく見えた
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