雪情
【近付く影ー7】


白井は首を振り



「そんな理由のワケない

……ただ俺には
やらなきゃいけない
ことがあるんだ」







「嘘をつけ。
犯罪者は
みんな助かりたい一心で
適当なことを言うからね」







しかし、
そんな言葉に
白井は激怒した。







「ふざけんな!!
俺にはやることある!
俺にとっては
とても大事なこと
なんだ!!

そのれを否定するのが
どれほど俺にとって
悔しいことか
アンタには分からない
のか!?」






今にも噛み付きそうな
勢いだ。






田崎は黙って聞いている







「あと犯罪者って
言うのもやめろ!

確かに人を殺めちまった
けど、
そう呼ばれたくないん
だよ」








そんなことを言うとは、
犯罪者としては珍しい…







「聞かなかったが、
なんで殺人なんて
犯したんだね?」






田崎はそう聞くが





「あんたに関係ない。

どうせ話しても
刑事ごとき俺の気持ちは
分からないに
決まってるだろうしよ」







刑事ごときか……




余程この男は、
刑事関係を嫌っている
らしい。







「ワシはなんでも
疑う刑事ではないよ。
人の気持ちは分かる」






「他の刑事とは違うだ?
さっき俺が逃げた理由を
否定したじゃないか」






「お前さんが
嘘をついて逃げなきゃ
逃げたワケを
否定しないね」







そう言うと
白井は黙ってしまった。








さっきの白井の嘘も、
田崎はすんなり
信用してしまった。






少し犯人に対し、
甘い考えだったようだ。


と思い、
警戒しようと
田崎は気を引き締めた
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