雪情
【近付く影ー8】


吹雪が止み次第
さっさと山を越えて
下山したいが、
吹雪は一向に止まない。







本当にここは
日本の山だろうか?

と思うほど雪は強く
何ヶ月も止まない
気さえする。







今回一番の失敗は
雪山をなめていたことだ







田崎は
現役時代よく雪の中
犯人の張り込みを
していた。







あの頃は

「寒いですね、
朝まで見張るんですか?」






と聞くと
田崎の先輩は
決まって怒っていた。






「当たり前だ、
刑事をなめたらイカン。
1に根性2に根性。
3、4、5共に根性
なんだ!

いいかげんな気持ちで
張り込みはするなよ」





雪は頭に積もり、
何度払ってもすぐ積もる








いい加減
払い落とすことも
面倒くさくなり、
体も寒さで震えてしまう








そんな経験を
田崎は幾度となく
繰り返していくと、
根性が身についてくる。







しかし、
性格までは
変わると言えない。







田崎は頭がキレる分、
物事を甘く見てしまう。







今回のこともそうだし、
これからも
注意しなくてはならない








「とんだ甘ちゃんだな…」


とボソッと自分に
言い聞かせる
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