雪情
【殺人の目ー2】


「あ……はい」






ハッとして
大久保は小川の治療を
やり始めた。







どうやら
口を少し切った程度で、
それ程
傷は深いものでは
なかった。







ふと田崎を見ると

まだ呆気に取られて
いるのか、
ポカンと口を開けていた







「どうしたんだ?

ボケた老人のように
口開けて……

そっか
もう老人だもんな」





と茶化してから
白井は横になった。






すると
白井の耳に
手がニュっと伸びた。





「いてててて!!
なんだよ!」





白井は
田崎に耳を引っ張られ、
涙目になった。





そして
田崎の雷が落ちた!





「バカモン!
何を言っているんだ!

あんなこと言って、
もし
お前が犯罪者ってことが
バレたら
どうするんだ!?」





もちろんこれは
小川や大久保に
聞こえないように、

小声で怒鳴りつけた
ものである。





「分かった、分かった!

だから
頼むから耳離してくれ!」





こちらは大声である。





「全く……
お前と居ると、
ヒヤヒヤさせるわい」





「まあまあ、
丸く収まったじゃないか」





そう白井は笑顔で言うが

どこが
丸く収まったの
だろうか?





田崎は
ただただ頭を抱える
だけであった。





「―――にしても

よくお前さん
あそこで堪えたな。
ワシは
本気で殺すのかと
思ったよ」





「ばーか。

たかが
あんなこと言われた位で
人を殺すか。

一発殴れば十分よ」





それに白井からは
殴ろうとしなかった。





あくまで
小川から仕掛けた喧嘩を
買っただけである。





「とにかく
これ以上は
騒ぎを起こすでない。

罪がさらに重くなるぞ」
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