雪情
【殺人の目ー4】


それを聞くと田崎は



「いや、違う違う。

ワシが言っているのは
小川さんの無意味な
暴力のことだ。

お前さんのやった暴力は
正しいよ」






「ハッ……珍しいな
俺に加担するなんて」






「そんな事はないね。

例えお前さんでも
一人の人間なんだから、

平等に見極めたわけだよ」






平等………か






白井は薄笑いを浮かべた






「ありがとよ…」






「何がだね?」







「…いや、何でもないよ」







と白井は小川を見た。






小川の手のひらを見ると
拳を握り締めた跡があり

紫色に変色していた。






それは
川上が殺されてから、

ずっと握られたものだと
分かった。







「…刑事さんよ……

アイツの暴力は
無意味と言ったよな?」







「ん?
確かにそう言ったが」






ふと白井に、
フラッシュバックの
ように

過去がよみがえる。






「…アイツが
俺に拳を上げたのは
仕方がなかったんだ。

精神的にな」






「精神的??」







「例え自分が
相手にされていなくても
彼女は彼女だ。

たった一人の
大事な女性が
誰かに殺されてみろ?

精神が
まともじゃなくなり
判断力もなくなる。

ただ
殺した相手だけの
復讐心に、
身を任せるだけになる」






「………」






田崎は黙って聞いている






むしろ
いつもと違う白井の
雰囲気に、

言葉が出なくなって
いるのだ。






「彼女を失った悲しみは
想像を絶する。

それが5年も
一緒に居たら…」






そうして
白井は窓を眺めた
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