雪情
【火で灯す闇ー3】


先程
田崎は窓を閉める時に
外の様子を見渡したが、

はしごもなければ
ロープもかかっていない




その疑問を
大久保に投げかけた。




「それで!

それでヤツは
どうやって
ここに上がってきたの
ですかね!?」




「おいアンタ
落ち着けよ!

まだ大久保さんも
気が動転しているだろ」




白井は
田崎を落ち着かせたが、

興奮するのも
無理がないであろう。




家に、

それも二階に
雪男が現れたのだから、

田崎は感情を
抑えきれなかったのである。




「分かりません…

私には分からないの
ですよ…」




大久保も
気が動転しているようだ




「ほら…
アンタが落ち着かないから、

大久保さんも
パニクっているじゃねえか」




田崎自身も、
少し落ち着いた方が
良さそうである。




「あ、すみませんな
大久保さん」




「いえ、いいんです…」




ここにきて冷静なのは
白井だけに見えるが、

実は誰よりも
内心震えていたのは、
他ならぬ白井であった。




それは
村から聞かされた
伝説以上に、

雪男の猛威に
一番恐怖を
感じていたからである。




しかし、
だからといって
冷静な気持ちを
損なってしまっては、

雪男の思い通りに
なってしまう。




白井は
ギリギリ冷静を
保っているのであった。




「ここからは
俺が大久保さんに
質問しよう。

それから
雪男はどうした?」




大久保は震えながらも
その続きを話した。




「み、見ると、
その手にはさっき
外に落とした
小川さんの銃を
持っていたんです…」




「小川の銃ってあれか?」




白井が見た先に、

大久保が
持っているのと
同じ種類の猟銃が

小川の側に落ちていた
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