雪情
【火で灯す闇ー9】


「ですから、
今からその連絡所まで
行くのですよ。

それも一人で」





「なんですと?」





また一人で行動されたら
同じ事の繰り返しである。





ただ
死体を増やすだけと
思った田崎は、

当然
その考えを否定した。





「いけませんぞ、
そんな危険な!

もし行くとしても、
全員で行動しましょう!」





しかし、大久保は
我武者羅の
小川などとは違い、

何か考えがあっての
案らしい。





それを
大久保は説明し始めた。




「よく考えてください。

大勢で、
それも雪山に
慣れていないあなた達が
外に出たら、

まさに雪男の
恰好の餌食です。

このような場合は
バラバラで行動した方が
逆に生存率が上がるのです」





田崎も
そのことは分かっていた




このまま三人でいたら、
まとめて殺される
危険性もある。





もし、
ここでバラバラに
逃げたらどうであろう?





田崎が山を下って逃げ、
白井が山を登って逃げ、
大久保がここで朝まで
隠れている。





雪男も複数ではあるまい






一人を捕まえても

二人まで捕まえることは
不可能である。







まさに、
二党追うものは
一党を得ずと言った
考えであるのだ。






しかし、
その作戦は

誰かが犠牲になって
誰かが助かると言う
方法であり、

全員が助かるという
意味での確率は
最も低かった。







田崎は、
自分が犠牲になって
二人が助かればいいと
思っているが、

雪男は誰を狙うか
分からない
無差別殺人者なので、
そうもいくまい





更には
もし他の二人のどちらかが
死んで、

自分だけ助かったら
どうであろう?






それを考えてしまう為

この方法に
賛成できないのである
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