雪情
【火で灯す闇ー10】


「そんな事は
分かっているが…」






田崎がそう答えると
白井が弁解するように
言った。







「ようは、
バラバラになる事で
一人は生存率が
上がるけど、
運が悪いヤツは
生存率下がるって
ことだろう?

他人思いの
この頭の固い刑事が、
そんな案
承諾しないって」







「白井よ、
誰が頭の固いのだ。

まあ、
そんなとこですよ
大久保さん」







だが、
いつまでも待つだけでは
駄目なものは駄目である







それを、
大久保は全て見越して
案を出したのであった。






「皆さん、
深く考え過ぎですよ。

私は今、
個々で逃げてくださいと
言っているわけでは
ないのですよ」







確かに
田崎の考え過ぎである。





更に大久保は話を続けた




「雪山に慣れていない
あなた達を
行かせるわけには
いきません。

それに、
連絡所までの
道を知っているのは
私だけです」







だが、
そう言われても
田崎はいまいち
賛成できない。






いくら一か八かでも、
一人で大久保を
外に行かせたら

雪男に
襲われてしまうからである。







「やはり
危険過ぎますな。

そんなことをすれば
雪男の的ですし、

これ以上犠牲者を
出したくないのですよ…」






田崎の一声は重く響いた






「…分かりました、

そこまで言われたら
諦めるしかありません」






と諦めたようである。






大久保は、
川上のように銃を向け
無理やりに
出て行くわけでもないし

小川のように
暴れるわけでもない。






仲間として冷静で
聞き分けも良いので、

田崎にしてみれば
とても心強い男であった
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