雪情
第20章 現れた雪男
【推理の末にー1】


今だ電気は普及せず、
部屋は暗闇に
包まれていた。




しかし、
もう長い間
この状態なので

眼が慣れ始めて、
部屋全体が
見渡せる程になった。




「大久保さん
どうしているかな…」




先に沈黙を破ったのは
白井であった。




「すっかり忘れていたね」




白井の話に夢中になり、
今自分たちの
置かれている立場を
忘れていた。




そう、
今この雪山で
雪男に狙われている
最中であった。




「俺はここで
死ぬわけには
いかないから、

何とか雪男に
殺されないよう
対策しなくてはな」




「そうだね…
お前さんには
やらなくては
ならない事もあるしね」




「ああ、
二階にまだ
小川の銃があるが、

持ってきた方が
いいんじゃないのか?」




先程田崎は
二階の窓も閉めたし
鍵も掛けた。




しかし、
雪男がぶち破って
入ってこないとも
限らない。




置きっぱなしは
危険かと思われるが、

実は二階にある銃は
取られても平気である。




雪男は小川の銃で
小川を殺害したのだから

銃の中に
弾は残っていないからで
ある。




小川の猟銃の銃弾は、
この部屋にある
彼のカバンの中に
入っているので

二階の銃は使えまい。




まあでも
用心に越したことはない




雪男が
猟銃用の弾を
持っていないとも
限らない。




いつも
予想を遥かに越える
行動をするヤツだから、

二人は念の為に
銃だけ取りに行く事にした。




二階に行くと
白井はいつものように
廊下で待機していた。




中から田崎の声がした。




「何しておる?
入ってこんか」




「銃取ってくるだけ
何だからいいだろ。

早く持って来いよ」




もちろん、

白井は死体が怖くて
入れないのである
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