雪情
【雪情ー6】


車に轢かれたわけでも
ないし、

この何もない雪山では
人間の力で
首を折ることは
無理だと考えられる。






そこで、
荻原の殺人は
正真正銘雪男だと
思ったのだ。







「何よりの証拠……
ほれ見てみい」







田崎が指すその先に、

大久保が
首をダランとしながら
倒れている。







「ひ……
スッカリ忘れていた」






「フフ、
死体が怖いか白井よ。

ほれ、
あの折れ方も
荻原さんと
全く同じだろう?」






言われなくても
分かっている。






この見事な折れ方は、
荻原の時と
寸分も違いはない。






「まあな……
人間の力じゃない。

でも、
よく熊と気付いたな」







「ワシは現実主義でな。

未確認の化け物とは
思わないよ」







田崎はそう言うと、
白井は雪男の姿を
思い出した。







「現実主義だって?

そんな人が
よく白熊だって
分かったな。

日本にいない
生き物だぞ?」







「ワシも
それは未だに
信じられんよ。

きっと特別変異で
色が白くなったのだけ
だろう」







田崎の言う事は
考えられないわけではない。







色など
その風景に身を隠す
ために、

体毛が白くなった…






これは
一般に信じがたい話だが

目の前に現れては
それを認めざるを
得ないのである。







「今考えると納得いくな

道理で警察の大掛かりな
山狩りにも、

犯人が
見つからないわけだよ」







「うむ。
まさか相手が熊だと
夢にも思わないだろうね」






なんだか二人は
可笑しくなってしまった







あれほど騒がせた犯人が
熊だからである
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