雪情
【雪情ー9】


「だから、
あの雪男は突然変異と
言っただろう?

子まで白くなるとは
限らんよ」







「そうなのか?」







白井には
チンプンカンプンだった







「それに、
小熊の時期は
親にピッタリくっついて
いるもんだよ。

子のためじゃなければ、
雪男も
あそこまで力を
つけたりしないだろう」







最近では
山で狩りをする人間が
増えていると言う。






あの熊は
子を守るため、

人目に付かないように
体を白くしたり
力をつけたのかも
しれない。







そのために凶暴な姿も
さらさなければ
ならないのだ。







こうして付けられた
あだ名が
「雪男」………







それは
あの熊にとって
大事な名前かもしれない







この雪山に
狩りにくる輩が
少なくなるからである。







例え何発の銃弾を
撃ち込まれようと、

雪男は
決して倒れることは
ないだろう。







大事な子を守るために…







「親子の絆だね……」






と田崎はポツリと呟いた







「もしかしたら
本当の「雪男」ってのは

大久保などの中に
潜んでいた
冷たい邪悪な
心のことかも
しれないな……」







そう白井が言う時に、
田崎は白井の足に
ボロキレを
巻き終えることができた







「ふっ……
うまいことを言う…」






「そうか?」







田崎はその言葉に
軽く微笑むと、
スクッと立ち上がった。







外は吹雪が止んでおり、

薄暗い光が
差し込んでいた
< 279 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop