雪情
【雪男ー5】


「刑事さん、
あそこでさっきから
窓を眺めている人は?」



川上は
微笑みながら聞いてきた



白井のことである。



白井は
相変わらず
窓の外を眺めていた。



「ああ、
彼は…
私の知人の
白井という者です」



と、田崎は
とっさに嘘をついた。



今は手錠をしておらず
外したままだ。



「よろしくね白井さん」



川上は手を振ったが、
白井に反応はない。



「無駄だぜ。

あいつさっきから
何も喋らねえんだ」



と小川は言う。



田崎は

「すいません、
彼は外を眺めている時は
周りの声が
聞こえないのです。

悪気はないんで、
許してやってください」



「へっ。
それでも
自己紹介の時くらいは
話に参加してもらいたい
がな」



小川は皮肉そうに言う。



「小川さん失礼ですよ。
すみません刑事さん」



と大久保は
軽く笑いながら
頭をかいた。



田崎は大久保を見て

「ところで大久保さん、
あなた達は
こんな雪山で何を?」



「あ、そうでしたね。

見ての通り
この銃で狩りをして
いたんですよ」



「狩り………ですか?
こんな吹雪に?」



「ハハ、
獲物は少ないですけど、
いることにはいますよ」



「じゃあ何も
こんな日に狩りなど…」



「いえ、
それに吹雪の日にしか
出ない獲物も
いるんですよ。
例えば………」



と言い掛けた瞬間
小川が口を挿む。



「おいおい大久保、
余計なことは言うなよ。
この土地の者じゃない
やつに、
そんなこと言ったら
いい笑いものだぜ?

知っているやつは
滅多にいないんだから」



「といいますと?」



と田崎は
不思議そうに聞いた。



「昔から
この雪山の
伝説となっている
生き物がいるんですが、

確かに刑事さんに
こんなこと話したら、
笑われるでしょうね」
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