雪情

【捜索ー８】


……そうだ、
ワシが引退した先輩に
言われた言葉だ。



それは、
田崎がやっと
ベテラン刑事と
言われた頃の話である。



やっと周りから、
青臭い刑事とは
言われなくなり、

ベテランの域に達した
田崎は、
どんな事件も
ミスをすることが
なかった。



そんな様子を見ていた
田崎の先輩は、

安心して定年を
迎えられた。



「田崎よ、
これで安心して
刑事を辞められるよ」



と言ったのは、
明日定年を迎える
佐々山刑事であった。



「いえいえ、
私はまだまだ
ヒヨッコなので………


佐々山刑事に
教えてもらうことは
ありますよ」



田崎はこの刑事と
いつも行動を共にして、

なかなかの
名コンビであった。



コンビでなくとも
田崎一人で
余裕に事件を解決
できるが、

この先輩刑事が
裏から支えている
おかげで、

細かいミスもなく
二重の
安心という名の壁を
作ることができたのだ。



「いや、
もうお前一人でも
立派にできるだろう」



と、佐々山は
田崎の肩を叩きながら
言った。



「どうも、
今までご指導
ありがとうございました」



田崎は深々と頭を下げた



「最後なのに、
こんなことを言ったら

口うるさいと
思われるかも知れんが…」



と言いながら
佐々山は頭をかいて、

「一つだけ
言わせてもらおう」



田崎は黙って聞いている。


「はい」と答えている
目である。


それを見た佐々山は
話始めた。


「いいか、
人は見た目で判断するな」


「見た目ですか？」


「そうだ、
特に犯罪者は……な」


田崎はゆっくり肯いた。


「はい、分かりました。

最後のアドバイス
ありがとうございました！」


と言い、
もう一度田崎は深々と
頭を下げた。



あの頃のことは
今でも鮮明に覚えている



見た目で判断するな

………か