雪情
【雪山ー7】


足が棒になるようだ。







それでも
今更戻るわけにも
いかない。







登って
10分もしないうちに
疲れがみえてきている。







「疲れたな」







と白井は言った。






ん………?




白井が言った??







あの無口だった白井が
喋ったのだ!!







田崎は
虚をつかれたかのように
白井を見る。







「そうだな」と言いたい
ところだが、
言葉を忘れたかのように
出てこない。







無理もない、
こんなにあっさり
言葉を発したのだから
つい何も言えなくなって
しまうのも
うなずける。








先程から
何時間と一緒にいたのに
今始めてこの男の声を
聞いたのだ。







何かとても
不思議な感じがした。







白井は田崎の足元を見て


「あんた
雪の山道知らねえな?
登り方がなってねえ」

と続けて白井は



「引き返すなら今だぜ」

と茶化すように言った。







ハッとして田崎は





「ここまで来て
それはないだろ。
今更嫌になったのか?」







「馬鹿言うなよ。
俺は雪山なんて
慣れているぜ」







「じゃあ
何故そんなことを
言うんだね?」







「そんな登り方じゃ
腰を痛めるだけだから
心配してやってるんだよ」







田崎は眉間にシワを寄せ




「何か企んでそうだな。
とても
犯罪者が言う言葉だとは
思わんね」







「企む?
本気で心配して
やったのにな。
疑うことしかできない
のか。
やっぱ刑事は刑事だな」







そうして
白井はまた黙って
しまった
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