雪情
【決意ー9】


「そうしますか。

朝には止むといいですな」



「心配しないでください

きっと止みますよ」



そう大久保は、
田崎を励ますように
言った。



しかし、
心配というものは
募るばかりだ。



「もし朝になっても、
雪が止まなければ
どうしますかな?」



「その場合、

私達が
いくらこの山に
慣れているといっても、
吹雪の中
下山は無理です。


…まあ、この辺りから
山頂までなら、
雪男の捜索の為
いつも歩いていますが…」



そういえば
ここは山のどの辺りか、
まだ聞いていなかった。



「ここから山頂は
もう近いのですかな?」



そう言うと
大久保は少し驚いた
様子である。



「知らずに
この雪の中
登って来たのですか!?」



「お恥ずかしい
話ですがな」



田崎は
恥ずかしそうに言う。



「ビックリしましたよ。

山は本当に危険ですから
注意してくださいね。

それと山頂までは
そんなに時間は
かかりませんよ」



「では
歩いて10~20分程
ですな?」



「もう少しかかりますが

だいたい
そのくらいですね」



「なるほど、
そうですか……」



と言葉が
途切れてしまった。



またも
部屋は静かになる。



外とは違い、
静かなものだ。



部屋には
5人も人がいるのに
この静かさ。


とても
先程の白井が作った
ご飯を食べていた
雰囲気とは
まるで違っていた。



特に田崎以外は
刑事でも何でもないので

殺人の現場など
見ることはない。



そのショックと
仲間を失った悲しみが、
この暗い雰囲気を
作らせている。



当然
言葉も少なくなるのも
仕方がないのだ。



調度いい、
少し横になるかな……



と田崎が
横になろうとしたその時

急に川上が立ち上がった



そして、
防寒具を着始めた
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