雪情
【決意ー11】


これには
皆目を疑った。



「川上さん………」



田崎がそう言うが、
川上は銃を下ろさない。



「ごめんなさいね……」



と言い、
川上は銃を向けながら
外の戸を開けた。



そして、
静かに吹雪へと
その姿を
消していったのだ。



………



川上が
外に出てしまったが、
誰も後を追えなかった。



しばらく
田崎達は立ち尽くした。



その中で
小川は目を見開いて
川上の出て行った戸を
眺める。



またも
川上のワガママで

皆の連携が
崩れてしまったのだ。



「ちくしょう………」



小川が床に崩れ落ちる。



「なんで、
行かせたくない
俺の気持ちが
伝わらねーんだ………」


そんな小川に
田崎は声をかけた、

…いや
かけようとしただけで
何も言葉が
浮かばなかった。


犯人の説得などは
得意だが、

このような時に
かける言葉は出てこない


しばらく小川には
声をかけない方が
いいだろう。


これからどうしようか?


川上が
本気で田崎達を撃つとは
思えないが、

今すぐに
後を追うのも気がひける


しばらく時間を置いて、
頭を冷やさせた方が
いいかもしれないからだ


「刑事さん、
この場合は
どうしたらいいと
思います?」


大久保は困惑しながら
話しかけてきた。


こんな時
このように
何か質問してくれると、
言葉を発しやすい。


「ワシも
今考えていたとこだよ」


「そうですか……」


「う~ん、
確かに何とかいい方法は
ないものか……」


とにかく
外には雪男がいるのだ。


早くいい方法を考えて、
川上を連れ戻さなければ
ならない。


「とにかく
また一人一人行ったら、
荻原さんのように
殺されてしまうかも
しれんしな」


「でも、
みんなで行ったら、
また川上さんに
追い出されて
しまいますし…」


「打つ手無しか……」
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