雪情

【雪山ー９】


「どうした？
吹雪に紛れて
私から逃げ出そうと
しているのか？」







すると
今度は返事を返してきた








「バカか！！
確かにあんたからも
逃げたいが、
俺が今すぐ逃げたいのは
この山だ！！」








さっきまで
おとなしかった男が、
急に感情的に
言葉を吐いた。







田崎は
この男の言っている
意味が分からなかった。







「なんだって。
どうゆう意味だ？」






そんな田崎の質問に
白井は呆れたように
答える。







「あんた
さっきの駅員の話を
聞いていなかったのか？
のん気なものだな。
吹雪になると、
この山には化け物が
出るんだよ」







そういえば確かに
そんな話を駅員から
聞いたが、
田崎は聞き流していた。







そんなものは冗談だと
思ったし、
現実的なことではない。







それでも田崎は
とりあえず
聞いてみることにした。








「化け物って、
どんな化け物なんだ？」







「雪と共に現れて
雪と共に消える、
いわゆる『雪男』だよ」