比丘尼の残夢【完】

※scene1『洋服も初めて』

私がここに来たのは、15歳になったばかりのまだ寒い春。



なんて大きなお屋敷なのでしょうか... 。

洋館と言うものを見るのも初めてで、大きな玄関で草履を脱ごうとしたら笑われた。


「洋服も初めて?」

「へぇ... 」

口減らしの女中奉公だと聞いていたのに... 。

与えられたメイド服は新品で、食事は1日三回。
自分専用のお部屋まであると言う。

家族や友達と別れるのは悲しかったけれど、なんだか天国にやってきてしまったようだ。


「着替えたら、付いてきて。あなたのご主人様はこっち」

「へ、へぇ」

このヒラヒラとした腰巻きは、足がスースーする... 。

同じ服の姉さんについて行くと、私は裏口から外に出された。


「あそこに離れがあるでしょう?」

指差された離れた場所には、確かに平屋の洋館が一つ。
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