比丘尼の残夢【完】

※scene3『どうか穏やかな寝顔で』

本格的に、これは隔離だ。

数日たって、ようやく私にもわかってきた。


大きなお屋敷の人たちはまったくこちらに姿を見せず、関わりは食事を置いてゆくだけ。

ある時どんな人が持ってきているのだろうかと気になって窓から覗いていたら、銀色の消防士さんみたいなツナギを着た男かも女かもわからないマスクの人物が、そっとお盆を置いて逃げるように走って行った。


まるで病原菌扱い。

病原菌なのかもしれないが、これだけのお金持ちの家だ。

もっとお医者さんのいる病院に入院させるとか、出来ないのだろうか。


ご主人様は慣れているのか気にした様子もなく、小さな離れの中でダラダラと過ごしている。


「ナナミ、遊ぼうぜ〜」

「駄目です。
お掃除終わったら、お蒲団干したいんで」

二人きりとなると、わりとやる事はある。


「言うこと聞けよ〜、つまんない〜!!」

最初は私の事をずいぶん子供扱いしてくれたが、うちの弟たちよりも、このご主人様は子供のようだ。
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