比丘尼の残夢【完】
構わないでいると、「うっ、心臓が!」と言って倒れる振りをしたりする。


「ひぃっ、大丈夫ですか!?」

火災報知機!


「と、思ったけど腹減っただけだったわ。飯おせぇな」

「...... 」

本気で心配するのも馬鹿馬鹿しくなってきた。

ホントに病気なんだろうか。

この人に、皆がからかわれているだけのような気もする。




試しにお屋敷の方に食器を下げに行ってみた。

そうしたら、初日に案内してくれた姉さんから、犬でも追い払うかのようにシッシッ! と手を振られた。


嗚呼、私もやはり病原菌扱いなのだ... 。


「だから言っただろぉ?」

落ち込んで帰ってきた私に、ご主人様は憐れむような目をして言った。


「もう私も一生ここから出られないんでしょうか...」
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