比丘尼の残夢【完】
「んなこたない。
俺が伝染病だって思ってるのこの辺りの連中だけだからさ。
俺が死んだら別のとこ行けばいいのさ」

「はぁ、なるほど...」

慰められているだけなのかもしれない。


「なんかお婆ちゃんが死んでから、尚更伝染病の信憑性がでちまってさぁ。85歳だったんだぜ? 大往生の老衰だっての... 阿呆かと」

「ご主人様、そんなお婆ちゃんにも悪戯して困らせてたんですか」

「嫌だね、この子は。老人驚かして死んだらどうするのよ... あ、死んだわ、あはは」

「あ、はは」

駄目だこのご主人様は。

たったひとりのご主人様だと言うのに、尊敬できるところが欠片もありはしない。


しかし、暗くなられているよりも良いのかもしれない。

この人は明るすぎるが。


「付き合わせてごめんねえ」

手に負えないと投げ出したくなっても、不意にそんな風に悲しそうに笑われると、放っても置けない。

わざとやっているのかもしれないが。
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