比丘尼の残夢【完】
なんとなくご主人様との接し方と美味しいご飯に慣れて来たころ、珍しくご飯ではない時間に呼び鈴が鳴った。


「... 」

私が出て来た事に、驚いたのは相手の方のようであった。


ご主人様と同じ年くらいの男の人。

白衣に黒くて大きな鞄を持っている。

一見して医者のその人物は、逆に私に問いかけた。


「なんだ、君は?」

「私、ナナミと言います。こちらで働かせて貰っています」

「そりゃ見ればわかるけど」

メイド服、似合わないのだろうかやはり。


「お医者様ですか、ご主人様はお部屋に... 」

「わかってるよ。あいつは他にいくとこないもんね」

見た目と同じく冷たい物言いをして、彼は先立って歩き始めた。


それを慌てて追いかけながら、この人は伝染病対策とかしないんだろうかと心配になった。

抗菌服ではなく、マスクすらしていない。
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