比丘尼の残夢【完】
「あなたの部屋も、あそこにあるから」

「あの、私は何をしたら... 」

「それはご主人様の指示に従って。大したことじゃないと思うわ、ただ... 」

「?」

「あそこのご主人様は、ご病気なの。一度あの家に入ったら、もうこちらの本館に戻ってきては駄目。じゃあ、頑張って」

曖昧に、でも早口で言った彼女は質問を受け付けなかった。


この大きなお屋敷で働けるわけではないのか。

私は少し、がっかりしました。



「待って。その子が、直嗣さんの?」

別棟に向けて歩きだそうとした時に、女の人が現れた。

すいぶんお上品な人だ。家の中でドレスにストールなんて、これから何処かにおでかけなのでしょうか。


「あ、奥様... ! あなた、ご挨拶して。こちらの奥様よ」

「へ、へぇ! ナナミでごぜえます!」

ご挨拶ってどうやるのだ。
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