比丘尼の残夢【完】
手早くそれをご主人様の腕に巻きつけると、さらに手早く注射器を顔の前に掲げた。

空気を抜いて、迷いなくそれを腕に突き刺すところまで見て、目眩がした。


い、痛そう。

ご主人様、苦しそう... 。

揺れる。

床が、天井が。

気持ち、悪い... 。


「きゅう... !」

変な声が出て、足元から崩れ落ちた。


「うお、... !?君までなにしてるん... 」

あとは何も、覚えていない。



目が覚めた時、ご主人様のベッドに寝ているのは自分だった。


「だから何度も言っただろう? 看護資格のある奴を雇えよ。いいな?」

「あー、うん... 考えとく... 」

ソファーにいるご主人様はクッションを抱えて苦笑いをしていて、医者は明らかに怒っていた。
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