比丘尼の残夢【完】
「それで、ナナミは... 」

嗚呼、私の名前だ。

私の事を、心配してくれているんですかご主人様。


「こいつは、ただの貧血だ。相当感受性が強いんだろうな。
人の注射見て倒れるとか、俺は初めて見た」

「よかったあ」

「よくあるか! こんなのお前が倒れた時に役にたたんだろうが!」

医者の言うことは尤もだ。

ご主人様が大変な時に、何もできなかった私... 。


「あー、うん... そうだね」

「それとな、検査。検査しろ! 病院はうちに来たら良い」

「うーん、ちょっとそれは... 」

なんだかこの医者に対しては、いつも元気なご主人様の滑舌が悪い。


「伝染病だなんだと、最初からこの家のお抱え医者ってのは可笑しいんだ。
お前もわかってるんだろう? あの弟の息がかかっているに決まってる」

え、どういうこと?


「大きい病院で早めに手術さえすれば、治るはずなんだ。
...... 何度言わせるの、これも」
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