比丘尼の残夢【完】
「ごめん... まだ考え中」

医者の言葉も最後は悲しそうであった。


本気で心配しているのに、伝わらないのが悔しいのかもしれない。

それは私もわかる。

ご主人様はいつも飄々としていて、掴みどころがない。

本当に具合が悪いなんて、病気だなんて、私すっかり忘れていました。



医者が帰ってしまってから、私はここはご主人様に譲らなくてはと思って身体を起こした。


「おお、大丈夫かナナミ」

「へぇ... ご主人様こそ... 」

「俺は慣れてるから平気。吃驚しただろぉ? ごめんな」

何を謝るのですか、こんな役立たずに。

助けてあげられなかったことが悔しくて、悲しくて、私は泣けます。


「まだどこか苦しい? 痛い? 薬ならたんまりあるぜ」

ヘヘと両手に謎の薬の束を抱えて、ジャンキーのように彼は笑った。
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