比丘尼の残夢【完】
これでは私、このうちで美味しいものを食べているだけです。

泣きだした私を見て、ご主人様はギョっとされた。


「あのさ、お前さん聞いてたなら... 
首切られるかもとかもっと自分の心配を... 」

そういえば、医者が私よりも看護師を雇えと言っていた。

でもそっちのほうが良いと思う。

この人が苦しむよりはずっと良い。


「うぐ~! 役立たずでズビマゼンーーーー」

「心配しなくていいわ、首切らない。鼻出てるぞ、まずはかめ!」

グシと顔に押し当てられたちり紙にチーンとして、そういえば医者は更に、弟がどうとか言っていたな... と思いだした。

でもすぐに忘れた。


「んじゃ少しは役に立て。抱かせて」

そう言ってよいしょ、とご主人様は私の隣に滑り込み、本当に私を抱き締めた。


緊張して、固まった。

犯される!?


不思議と恐ろしさはなく、ご主人様の肌からは薬の香りがした。
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