比丘尼の残夢【完】
郊外のお寺に着いた時にはまだ日が高くて、柄杓から飲む冷たい水が饅頭で乾いた喉に染みた。
手土産を住職の奥さんらしき人に預け、医者を先頭に山の斜面を登った。
だいぶ高い場所だ。
墓石は周りよりもだいぶ新しかったが、参る人もないのか煤けて見えた。
これは気合が入る。
医者の手から水桶を受け取ってたわしで擦り上げると、あっという間に美しくなった。
「綺麗な御墓ですね~」
額の汗を拭いながら振りかえると、さっきまで線香の束に火を点けるのを苦心していた医者は、諦めてその火で煙草を蒸かしていた。
「まだ建てて3年だからな」
「3年」
その年数は、聞いた事がある。
医者は「まだ」と言ったが、初めに私がその年数を聞いた時には「そんなに長い間」と思ったのだ。
「ご主人様が病気になってから、亡くなったんですか」
それは残して逝くのは辛かっただろうな、と再び墓石を見た。
手土産を住職の奥さんらしき人に預け、医者を先頭に山の斜面を登った。
だいぶ高い場所だ。
墓石は周りよりもだいぶ新しかったが、参る人もないのか煤けて見えた。
これは気合が入る。
医者の手から水桶を受け取ってたわしで擦り上げると、あっという間に美しくなった。
「綺麗な御墓ですね~」
額の汗を拭いながら振りかえると、さっきまで線香の束に火を点けるのを苦心していた医者は、諦めてその火で煙草を蒸かしていた。
「まだ建てて3年だからな」
「3年」
その年数は、聞いた事がある。
医者は「まだ」と言ったが、初めに私がその年数を聞いた時には「そんなに長い間」と思ったのだ。
「ご主人様が病気になってから、亡くなったんですか」
それは残して逝くのは辛かっただろうな、と再び墓石を見た。