比丘尼の残夢【完】
※scene6『奈何せん本人があれ』
帰り道お屋敷に近づいたころ、一台の車に追い付かれた。
クラクションに振りかえると、そちらは黒塗りの高級車。
医者が車を脇道に停めて、舌打ちをした。
「不味いのに会っちまった」
隠れていろ、と言われてもこの車に隠れる場所はなく、持っていた風呂敷きを頭にかぶって見た。
それを見て医者は何か言いたそうな顔をして、降りて行った。
後ろに止まった高級車の扉を白い手袋をした運転手さんが恭しく開け、降りて来たのは医者よりも少し若い洋装の男の人。
先に頭を下げたのはその男の方だった。
医者が煙草を一本吸い終わる間二人は何か笑って話し、男がこちらを向いた。
誰だかしらないけど、気付かれたら不味い! 医者に怒られる!
泥棒のように風呂敷をギュッと絞って、きつく目を閉じた。
コンコンと窓を叩く音。
嗚呼、バレてしまったのか...
諦めて目を開けた。
クラクションに振りかえると、そちらは黒塗りの高級車。
医者が車を脇道に停めて、舌打ちをした。
「不味いのに会っちまった」
隠れていろ、と言われてもこの車に隠れる場所はなく、持っていた風呂敷きを頭にかぶって見た。
それを見て医者は何か言いたそうな顔をして、降りて行った。
後ろに止まった高級車の扉を白い手袋をした運転手さんが恭しく開け、降りて来たのは医者よりも少し若い洋装の男の人。
先に頭を下げたのはその男の方だった。
医者が煙草を一本吸い終わる間二人は何か笑って話し、男がこちらを向いた。
誰だかしらないけど、気付かれたら不味い! 医者に怒られる!
泥棒のように風呂敷をギュッと絞って、きつく目を閉じた。
コンコンと窓を叩く音。
嗚呼、バレてしまったのか...
諦めて目を開けた。