比丘尼の残夢【完】
洋服の胸を掻き毟るように押さえ、苦悶の表情の口からは赤い血が床に流れている。


病気のご主人様!
この人?!


「... 今、誰か呼んできますっ!!」

お医者さんを呼んで貰わなくては。


「あ、待て」

「気、気を確かに〜!! 死なないでくだせぇっ」

「待てって。いや、これ冗談... 」

「ひゃ〜! 死人が喋りおったー!」

「これ血じゃないよ。トマトジュース、な?」

ほれ、と差し出された指からする匂いは、確かに。


「...... 」

そういえば、死人は喋らない。


「期待通りの反応を有難う。俺、直嗣! よろしくね」

それではあなたが、やはり私のご主人様。


「... ナナミ、です......」

ご主人様は、目が合うとにこりと笑った。
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