比丘尼の残夢【完】
お上品な女性であった。

たぶん笑い声はオホホに違いない。


「今は浩毅の嫁さんだけど、あの女だって本当は直嗣の許嫁だったんだ。
昔は仲が良かったのに、浩毅も変わったよ」

「ぜ、全部奪っちゃったのですか、ご主人様から... 酷過ぎる」

財産だけでなく、許嫁までも!

鬼畜だ。

そこまでされたらあのご主人様だって絶望するに違いない。


悔しくて鼻水が出て来た。


「・・・君、直嗣にご執心なんだな」

「当たり前です! ご主人様ですからね!」

いつも自分のご飯を私にくれるし。

飯の恩は忘れない。

大体私くらい味方してあげずに、一体誰があの人に優しくしてあげられると言うのだ。


「直嗣も相当君の事を気に入っているみたいだけど。
墓参りに寄越したのなんて初めてだ」

「そうですか... 」

「婆さんの前は、何人もメイドを追い出したんだが、何故か君はまだいるしなぁ... 
あいつはババアか餓鬼しか相手に出来ないのか」
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