比丘尼の残夢【完】
ごくり。


「うつったな、お前の病気が」

「はは、へんな冗談止めてよ! 伝染なんかしないって... 」

ご主人様は誤魔化すように笑ったが、医者は無表情のままだった。


「それお前が勝手に言ってただけだろう。
正確に検査もさせてくれなかったし、俺は責任なんてとれんよ」

「だって可笑しいじゃないか! 
どうしてこいつにうつって、3年も診てるお前にうつらない!?」

そうだそうだ!

私は仕掛け人側の人間だと言うのに、ご主人様を応援したくなって一緒に頷いた。


「さぁな。女かババアか餓鬼にしかうつらないウィルスなんじゃないか」

よろりと、ご主人様は後ろ手をついた。

老衰で亡くなったと言う前のメイドさんのことでも思い出したのかもしれない。


でも良く考えると可笑しくないですか。

だってじゃあ、どうやって最初にご主人様が病気になったの?


ご主人様はそんなことには気が付かない様子で困惑している。
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