比丘尼の残夢【完】
ご主人様は胸元を押さえて俯いた。

発作だ、不味い。


「ごっ、ご主人様! 今お薬持ってきますっ」

演技なんてしている場合ではない。


「あっ! こら、起きるなナナミ!」

医者の制止を求める叫びが聞こえたが、無視して私は飛び起きた。

動いた瞬間、派手に腹が鳴った。


「...... 」

ピタリ、とその場の空気が凍った。


「... ほら、可笑しいと思ったんだ」

沈黙を破ったのは、発作の時は口もきけないはずのご主人様で、苦しそうな顔は苦々しい表情に変わっていた。


「俺と同じ病の奴が、こんなに元気に腹が鳴るものか。
ナナミに何を吹き込んだんだ」

ぐ、バレた... 。


「クソ、もう少しだったのに」

医者は悔しそうに唇を咬んで、私を睨んだ。

あ、私が悪いんですね。
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