比丘尼の残夢【完】
でも病気のプロの病気の演技に、適うわけがないではないか。


「阿呆、わかるわ。どうやってうつるんだよ、心臓病が!」

うつるなんて言ったときから、バレてたらしい。

やっぱり。

巧くいくわけないと思った勘は正しかった。


「流石だ。次の手を考えることにしよう」

「いい加減にしてくれ!」

「では気を取り直して、いつもの検診といきましょう」

うわぁ、この医者すごい。

謝りもせずになかったことにしてしまった。

さっさと出した道具を黒い鞄につめ直し、出て行ってしまった。


「ご主人様、すみませんでした... 」

「本当に何処も痛くはないの?」

「へぇ、... あの」

怒らないのですか、私のこと。


「なら、良い。俺もいつもやってる... 結構効くな」

確かに、朝起こしに行くと死んだ振りしたりしているけど。
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