比丘尼の残夢【完】

※scene2『ここで貴方と二人きり』

本当に他に人が居ないらしい。

綺麗に見える室内も、よく見れば所々埃が積もっていた。

見学ついでに家中を雑巾がけして回ったら、あっという間に時間が過ぎた。



お昼時。

呼び鈴が鳴ったので慌てて玄関に行くと、綺麗なお盆に乗った食事が二組置き去られていた。


「なんよ、これ... 」

聞きたい事がたくさんあったのに、まるで私に会いたくないみたいだ。


「お食事が届きましたぁ〜!」

コンコンとご主人様の部屋をノックすると、「どうぞお入んなさい」ととぼけた声がした。


「お食事はどちらで召し上がりますか」

ご主人様は机に肘をついて、なにやら難解そうな本を読んでいた。


「何処でもいいよー。俺とお前さんしかいないから、たまには外で食べるかね?」

たまにはどころか私はここに来て初めての食事なわけだが、言う事は聞いた方がよさそうだ。


「わかりました〜。お庭ですね」
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